シーゲル流投資はアノマリーの一つに過ぎない

米国株サイトにとってのバイブルの一つ、シーゲル教授の「緑本」こと、「株式投資」を少し前に読みました。

あちこちで褒められているので教条的なトンデモ本かと思っていましたが、理論的に書かれていて良い本でした。

当ブログも参加しているブログ村の米国株カテゴリで、「シーゲル流」と言われる投資方法が最近流行っていますね。僕の理解だと、「シーゲル流投資」とは、足元の配当利回りが良く増配履歴が長いディフェンシブなセクターの優良大型株を、中長期的に配当再投資し続ける戦略です。銘柄の例を挙げると、コカコーラ、マクドナルド、ファイザー、エクソンモービル、ウォルマート、IBM、フィリップ・モリス、アルトリア、ジョンソン・アンド・ジョンソン、AT&Tなどです。特に「シーゲル流」と名前がついていなくても、「ブログ村」においてディフェンシブな株が非常に好まれていることは明らかです。

この本ではそのような投資が奨励されているのかと想像していたのですが、この「緑本」で推奨されていたのは僕が思い込んでいたいわゆる「シーゲル流」とは少し違いました。

「緑本」では様々なアノマリー(市場の歪み)について分析されています。例えば1月は株価のパフォーマンスが良いとか、月曜日は株価が下がりやすいとかですね。

「緑本」の結論では、米国株に限らず先進国クラスや新興国クラスの分散された株式インデックスを長期的に保有することが推奨されています。例えばVT(バンガード・トータル・ワールド・ストックETF)を配当再投資してひたすら保有するような手法です。

ネットの書評を読むと、「緑本」の続編である「赤本」では(まだ僕は未読ですが)更なるリターンを狙う戦略として、エネルギーセクターやヘルスケアセクターの過去の利回りに着目して、これらセクターへの重点的な投資が推奨されているようですね。これがいわゆる「シーゲル流」の理論的根拠となっているようです。

最近、ブログ村の記事を読んでいて思うのは、シーゲル教授が言っていることは経験的なアノマリーであって、先験的な(どんな環境でも正しい、という意味で使っています)投資理論ではない、ということが理解されているのだろうか、という疑問です。

これまで、エクソンモービルへの配当再投資戦略が IBMへのそれをアウトパフォームしてきたのは、原油というオールド・ビジネスへの期待が、コンピュータという画期的なビジネスへの期待よりも低かったからです。したがってPERは低位に抑えられ、配当再投資が有効だったわけです。

フィリップ・モリスが全ての大型株の中で最高のパフォーマンスを出したのも、規制や市場縮小への懸念が PERを抑えてきたことが一因です。

翻って現状はどうでしょうか?フィリップ・モリスのPERは24.6倍、配当利回りは3.77%です。バリュエーションはグロース株に接近しつつあり、配当利回りは史上最も低い水準です。バリュエーションが割高になるとはどういうことでしょうか?理論株価とは、将来の配当の現在価値でした。したがって、もし現在の価格が適正だとしたら、フィリップ・モリスはIQOSの世界展開について今後の成長性が評価されているため、足元のバリュエーションが割高になっていると考えられるでしょう。電子タバコ市場の将来は非常に魅力的であり、フィリップ・モリスの収益見込みは明るいでしょう。しかしこれは原義的なシーゲル流投資ではありません。タバコセクターが変質しており、もはや期待されず低位に放置されるセクターではなくなっているからです。タバコセクターのアノマリーが消失しているのです。

タバコセクターに限った話ではありません。「緑本」では、過去100年にわたって見られたアノマリーが、最近では消滅しつつあるという例がいくつも出てきます。アノマリーは広く知られた時点でアノマリーではなくなるのです。

一方で、小型株効果は良く知られた現在でも存在するアノマリーの一つですが、「シーゲル流投資」を行っている人たちは、しばしばそのアノマリーを無視しているように見えます。

僕の意見はこうです。

①シーゲルの推奨する投資方法は経験的に優れている。

②将来的にアノマリーが存続するかどうか定かでない。

③バリュエーションを確認し、理論の本質に立ち戻ることでアノマリーの有効性を確認することができる。

④セクター名や米国株という括りだけに着目するのでは、シーゲル流投資は早晩、教条主義に転落するだろう。

 

“シーゲル流投資はアノマリーの一つに過ぎない” への4件の返信

  1. 私は投資理論をたいしてまじめに勉強していないのでアレですけど、このご意見は卓見のような気がします。あやふやな言い方で申し訳ないのですが。
    ( ̄Д ̄;;

  2. こんばんは。コメントありがとうございます。
    記事を投稿してみてなんというか、儲かるか儲からないかではなくて理論の整合性にこだわるという意味で、あまり役に立たない文章を書いてしまったかも…と反省していたのですが、気に入っていただけて嬉しいです。
    もちろん紹介はお好きになさってください。賛否両論大歓迎です。

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