テンセントの銘柄分析(前編)

先日買ったテンセントの時価総額がFacebookを抜き、アジアで初めて時価総額が5000億ドルを超えた企業になりました。創業20年も経っていないというのに。

株価は年初来130%上昇していますが、PER54倍というバリュエーションは適切なのでしょうか?

 

まずトップラインから始めましょう。テンセントのセグメントは3つに分かれます。「VAS」(Value Added Services)と「オンライン広告」と「その他」です。

「VAS」の大半はオンラインゲームの収益、一部はコミュニケーションアプリ(Wechat、QQ、Qzone)の課金収益です。「その他」はWechatでの支払いでの受取手数料や、クラウド事業ですね。

どのセグメントもYonYで50%以上の驚異的な増収ペースです。

セグメントごとの四半期Gross Profitを見ると、310億元のGross Profitのうち、250億元がVASから生み出されていることがわかります。VASの大半はゲームですので、テンセントは今はゲーム会社と言っても過言ではありません。

まずゲーム事業から見ていきましょう。日本のスマホゲーム業界は競争が激しく、今儲かっているゲームもすぐに旬が過ぎるので、ゲーム会社のPERは低めです。例えばパズドラのガンホーは予想PER8倍、ドラゴンボールのアカツキは21倍、白猫のコロプラは25倍です。

テンセントのゲーム事業はこれら日本のスマホゲームより2つの点でStickyなため、高いバリュエーションを正当化できると思います。

①ゲーム性/競技性

ゲーム事業のうち、PCゲームの売上はYonYで27%増収の146億元。スマホゲームの売上はYonYで84%増収の182億元です。

PCゲームはLeague of Legends(LoL)というMOBA(対戦リアルタイムシミュレーション)やDnF(日本での名称はアラド戦記)というオンラインRPGが中心です。

LoLの開発元はアメリカ企業ですが、東アジアでの人気に目をつけたテンセントに2011年に買収されています。LoLのアクティブプレイヤー数は月間9000万人で、世界一の規模です。DnFの開発元は韓国のネクソンですが、中国でのライセンスはテンセントが持っています。

LoLもDnFも10年近い歴史を持つゲームであり、基本プレイ無料で多くのプレイヤーを集めています。こうした対人対戦ゲームは、ガチャによる個人収集が中心の日本のスマホゲームよりも、一旦軌道に乗れば寿命が長いです。

LoLの世界大会は賞金総額5億円で、これは運営会社から提供された賞金としては世界一です(プレイヤー課金による賞金としてはDota2の27億円が最高)

テンセントのモバイルゲームは、Honor of Kings(LoLに良く似たMOBA)が中心ですが、他にもソフトバンクから昨年買収した北欧のゲーム会社スーパーセルのクラッシュロワイヤル等のタイトルも持っています。これらも対人対戦ゲームで、課金圧力が強く、寿命が長いビジネスです。

②規制

テンセントのゲームが中国政府に保護された中国ローカルのもので、他国に通用しないという批判は間違っています。LoLの開発元であるアメリカのRiot Gamesや、クラッシュオブクランなどの開発元であるフィンランドのスーパーセル、Gears of Warの開発元であるアメリカのEpic Gamesなどに出資し、ポートフォリオを多様化させています。

一方で、テンセントのゲーム事業が規制と共に生存していることも事実です。

中国政府はHonor of Kingを子供の成長に悪影響を与える「毒」と批判し、テンセントは子供のゲーム利用に対して時間制限を掛けざるを得なくなりました。

現在、中国を除く世界で一番勢いがあるオンラインゲームは、「PUBG(PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS)」です。韓国のメーカーがバトル・ロワイアルの世界観を参考に作ったオンラインFPS/TPSゲームで、孤島に降り立った100人のプレイヤーが殺しあうというコンセプトです。ニコ動でプレイ動画を見ましたが、物資や建物を奪い合うシビアなプレイ体験と、戦いの中から生まれるプレイヤー同士の友情が面白いです。

PUBGの中国での独占配信権をテンセントが得ましたが、ゲーム内容が残虐すぎるとして、中国政府の指示でゲーム内容に制限を加えることが明言されました。

そもそも任天堂やソニーなどのコンシューマゲームは中国から排除されているため、オンラインゲームやモバイルゲームが流行る土壌があるのですが、このように、パソコンのオンラインゲームにおいても、他国で流行っているゲームを中国の規制に沿った形で配信できるのは、圧倒的な勢力を有するテンセントの特権であり、したがって中国のオンラインゲーム市場におけるテンセントの地位は、ドミナントであり続けるというのが僕の私見です。

 

長くなったので、ゲームセグメント以外の話は次回に続きます。

 

https://www.stockclip.net/notes/764

ところで、このstockclipによる企業価値の計算は参考になりません。継続価値が企業価値の95%以上の時点でおかしいと思うべきです。資本コストの考え方が間違っています。割引率には長期国債利回りではなく、WACCを使うべきで、WACCは10%を超えるのではないでしょうか。そもそも、中期の成長率を一定としたDCF法の計算をこうしたテック企業に採用するのは適切ではなく、EBITDAマルチプルなどを使うべきです。このサイト、月額1980円か…デザインはいいけどね。

 

 

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