GOOGLを買い増し

アマゾンに続いてグーグル株も1000ドルを突破したタイミングで、グーグル株(ティッカー:GOOGL)を2株買い増しました。

ここのところエクソンモービル(ティッカー:XOM)が80ドルを切る水準まで調整しており、配当利回り3.8%まで来ていたので、エクソンとどちらを買うか激しく悩んだのですが、原油価格の低迷はもう少し続きそうなことが一つと、FANG銘柄(Facebook, Amazon, Netflix, Google)の上昇ペースが著しく、FacebookとNetflixはもはや正当化できない水準に達しつつあると思うため、先にGOOGLを買いました。XOMは75ドルあたりで待ち受けたいです。

GOOGLを2ヶ月前に2株買った時は830ドルだったので、わずか2ヶ月で20%以上も高くなってしまいました。広告ビジネスやAndroid Marketの成長性や寡占性、WaymoやNianticへの期待感を考えると、実績PER33倍はまだまだ高くはないとは思いますが、それにしても異常な加速です。数年前はPER17倍とかだったよね?

最近のテクノロジー株の急騰はかなり危険だと思っていて、AmazonとGoogleは成長性だけなくキャッシュフローを伴っているので理解できますが、UBERやNetflixについては不当に高いと思います。また、仮想通貨は明らかにバブルですが市場が10兆円以下と小さく、株との相関もあまりないため弾けても大きな影響はないと思っていました。ですがIT系のベンチャーが仮想通貨で資金調達を行うなどの事態も起こっており、もしこのままテクノロジーと仮想通貨の蜜月が続くと、今度のバブル崩壊はここから起こるのかなあ、といった懸念を持っています。

任天堂の目標株価を計算してみた

任天堂switchが大ヒットしており、量販店やamazonで入荷しても一瞬で売り切れる状況が続いています。日本に限らずアメリカやヨーロッパでも同様です。この品薄の要因は、一つにはWiiUの失敗経験により製造台数を絞ったことがありますが、携帯可能でテレビ画面にも映せて、気軽に複数人で遊べるというswitchの独創的なハードウェアが極めて高く評価され受け入れられていることや、ロンチソフトのゼルダがゲーム史上に残る傑作と絶賛されていることなど、複合的な要因によるものです。これほど品薄が続いているゲーム機は歴史上初めてのことです。

僕はというと、こないだ幸運なことにヨドバシ秋葉原でたまたま売っているのを見かけて、慌てて買いました。ゼルダは(個人的にはマザー2や時のオカリナに匹敵する)最高のゲームで、switchは寝ながら遊べて簡単に友人とも対戦できる最高のゲーム機だと断言できます。PS4も持っていますがswitchを買ってから一度も起動していません。

switchへの期待感により任天堂の株価はポケモンGOバブルを超え、先週は一時8年ぶり高値の34,000円台をつけました。上場来高値は07年のWii、DSブームの頃につけた73,200円です。

急騰する任天堂の株価に対して一部ではバブルとの声も聞かれますが、どれくらいが妥当なのでしょうか?

楽天証券とSeeking Alphaのレポートを参考にしてみましょう。

https://www.rakuten-sec.co.jp/web/market/opinion/stock/imanaka_weekly/0158.html

楽天証券のレポートでは18年度のEPSが1,623円、PER25倍〜30倍で目標株価45,000円があり得るとみています。

https://seekingalpha.com/article/4077658-nintendos-top-line-will-grow-33-percent-cagr-2016minus-19-switch-takes

Seeking Alphaのレポートでは長期的なEVAバリュエーションをもとに適正株価は51,000円だとしています。

数年間の製品サイクル毎に全く景色が変わってしまうゲーム業界で、10年後のEVAを求めることにどれほどの合理性があるのかわからないので、僕としては楽天証券のレポートのほうが有意味なように思います。

この楽天証券の数字が妥当かどうか検証するため、似たような手法でスプレッドシートを組み、目標株価を計算してみました。

 

switch本体の売上台数を17年度は1500万台、18年度は2000万台、19年度は2500万台とし、タイレシオを3本前後としてゲームソフトの売上本数を計算。これは楽天証券よりも保守的な数字です。ファーストとサードパーティに分け、ダウンロード比率が今後上がるとして売上原価の低減を見込んだのが楽天証券よりもおそらく詳細にやったところです(実際にPS4ではダウンロード比率が25%以上に高まっており、大きくマージン増に効いています)

詳しい説明は省きますが、以上のような前提を置いて計算したところ、17年度見込みはEPS444円、PER90倍で目標株価4万円。18年度見込みはEPS1,236円、PER40倍で目標株価5万円。19年度見込みはEPS1,625円、PER35倍で目標株価5万7千円との結果になりました。

上場来高値7万円をつけたときは予想PER53倍だったので、switchのピークでPER35倍はあり得る数字でしょう。仮に19年度見込みEPS1,625円に対してPER53倍で計算すると8万6千円ですが、さすがに無理のある数字な気がします。

というわけで、switchがこのままうまくいくとすれば、今の株価もバブルではなく、まだアップサイドが見込めるということになります。

 

(あくまで推測レベルの前提での計算なので、投資の参考にするのは危険です。投資する前に一度自分でも作ってみることを推奨します。)

住信SBIネット銀行で外貨積立のコスト値下げ

SBI証券と提携している住信SBIネット銀行で、外貨積立(ドル円)の手数料が今までの片道15銭から、6月6日以降は片道5銭となります(ちなみに6月5日まではリアルタイムの外貨預金が片道0銭)

今までも為替手数料がマネックスや楽天証券の片道25銭に対して安かったので、住信SBIネット銀行経由でSBI証券で米国株を買っていたのですが、今後はますますSBI証券の優位性が高まりますね。

僕は現在、毎日4,500円分のドルを積み立てています。(こないだまでは毎日1,500円分としていましたが、ドルでの投資余力を増やすために積み増しています)およそ一日40ドルを買うとして、1ドルあたり10銭の手数料値下げは、一日あたり4円のコストダウンになります。小さいように見えますが(今計算してこんなもんかと思いました)、運用額の0.1%を節約できたと考えると、馬鹿にできる数字ではありません。

さて、ドル円の動向が米国株での運用に与える影響については、あまり深刻に捉えるほど大きくはないと思います。理由は二つあって、

一つ目は、株価は指数的に伸び、ドル円は一定のレンジ相場なので、為替のタイミングをじっと待つよりは継続的に株に投資した方が良いということです。中長期的な観点では配当再投資後の株価は複利によって指数的に伸びますが(米国株は経験的にも正しいですが、日本株は微妙なところです)ドル円は購買力平価などのファンダメンタルズを中心にしたボックス相場で、今後数年間は100円〜130円の間に収まるでしょう。

二つ目は、ドル高(円安)になれば米国以外で売上が多いグローバル企業のドル建ての収益力が弱まり、ドル建ての株価が下落するので、円建てのパフォーマンスが相殺されるということです。フィリップ・モリスの株価は昨年11月の大統領選後大きく下落し、ICOSの成長を睨んだ上昇相場に転じたのは、ドル高が反転した1月中旬以降のことでした。

このような理由から米国株を買うにはドル円相場をあまり気にせずよく、むしろ輸出株の見通しに日経平均が引っ張られがちな日本株のほうが、ドル円の影響を受けやすいような気がします。

 

 

17年5月末のポートフォリオ

更新をめちゃくちゃサボってしまいました。

米国株の株価が高値圏にあってあまり買い場らしい買い場が見つからなくて、頑張って銘柄分析をするよりも適当に新興国株式インデックスでも買っとけばいいか、みたいな気分でした。あと、短歌や絵画、映画など文化的な趣味にかまけてました。

1Qの決算分析をまだやってなかったので、6月はいくつか濃いめの記事を書ければと思います。ご期待ください!

5月末の時価合計:5,722千円(前月比+356千円)

購入:DB、投資信託3種

売却:なし

6月はボーナスが出て、手持ち資金と合わせると300万円弱くらいのキャッシュになるので、良い売り物があれば積極的に買っていきたいです。

17年4月末のポートフォリオ

忙しかった4月がようやく終わり、仕事も落ち着きを取り戻せそうです。海外の決算発表も出揃いつつあるので、また決算発表の分析をやっていきたいですね。

さて4月末のポートフォリオです。

購入:DB(ドイツ銀行)、VYM、ニッセイ外株インデックス、SBI-EXE-i グローバル中小型インデックス

売却:HBI(100株だけ)、DA(デルタ航空)、 VRX(ヴァリアント・ファーマシューティカルス)

保有株ではアルファベットが好決算により史上最高値を更新。

一方、デルタ航空は、ユナイテッド航空のダブルブッキングによる不祥事に対応するために補償金額を100万円に上げたり、アメリカン航空の賃上げの煽りを受け、株価が低迷。ヴァリアントはひどい決算により安値を更新。

デルタ航空については航空業界の経営環境が今後悪化することが見込まれ、現在の低EPSはバリュートラップであると判断して損切り。ヴァリアントは株価が下落し保有株の時価が10万円を切ったので、決算発表を丁寧に見るよりもインデックスに乗り換えた方が有意義であると判断して損切り。もっと早く見切りをつけるべきだった。

ヘインズブランズはポートフォリオに占める割合が大きすぎるため一部売却。先日出た17/1Qガイダンスは良好だが、以前よりもアパレル株への個人的な期待感が低下している。

ドイツ銀行を新規に購入。この購入タイミングがベストであるとは思わないが、増資が完了して自己資本に厚みが出てきたことと、銀行株は政治で動くため、ECBのテーパリング期待や、5月のフランス大統領選、夏のドイツ大統領選でも波乱なしの展開が予想されているため、株価に一段の上昇余地があるのではと判断した。

追記:

先日書いた中国の電子決済についての記事

について、現地情報のまとめ記事が市況かぶ全力2階建にあった。

http://kabumatome.doorblog.jp/archives/65890870.html

クレジットカードは個人貯蓄がマイナスになることもありうるアメリカの消費者の信用決済中毒に依存した制度であり、コストが高すぎると思う。早晩、クレジットカードはアメリカのガラパゴス的な制度になるのではないか。

EBITDAとは何か

めちゃくちゃ遅くなりましたが、先日の記事で予告したようにEBITDAの話。ちょっとややこしい内容かもしれません。

The End of Accounting:投資家にとって有用な指標とは

EBITDAとは、Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amorizationの略で、利払い前・税引き前・減価償却前利益という意味。当期純利益に支払利息と法人税と減価償却費を足したものだ。イービットダーとか、イービットディーエーとか、イービッダと発音される。最後のが一番ネイティブっぽいので気に入っている。仕事柄、会話の中でEBITDAのことがたまに出てくるが、その時はドヤ顔で「イービッダ」と発音してます。

EBIT(利払い前・税引き前利益)という概念もあるが、これは、企業の利益が債権者、税務署、投資家にどのように山分けされるかを表している。

EBITDAでは更に減価償却費を足している。減価償却費は会計上の費用だが、実際のキャッシュアウトではない。実際にキャッシュアウトが出るのは設備投資のタイミングであり、減価償却費は設備投資額が将来にわたって期間按分されている。しかし減価償却費を利益に足すと、過去のキャッシュアウトである設備投資の影響が見えなくなってしまう。

現実には、事業を維持するためには更新投資や新規設備投資が必要になるので、企業は、毎期減価償却費と同じくらいの設備投資を否応なしに行なっている。したがって企業が得た、債権者・税務署・投資家で山分けするお金はEBITDAではなくEBITで見たほうがより適切だろう。例外は買収で多額の無形固定資産の償却が生じEBITが赤字となっている場合。設備投資と償却のバランスに歪みがありEBITだと事業の収益性が見えづらい場合にはEBITDAが有用。こうしたケースは製薬会社などに多い。ただしEBITDAを見る場合には、設備投資も合わせて見なければならない。

(話はずれるが、この企業の利益をステークホルダーで山分けするという考え方は、資本コストを考える際にも非常に有効です)

ウォーレン・バフェットは「EBITDAを利益と同様に扱うことは、ビジネスとはピラミッドのようなもの、つまり今後、何かに置き換えたり、手を加えたり、修理したりする必要がなく、永久に最先端のままであるというのに等しい」と言っている。

また、ロバート・C・ヒギンズはEBITDAをもじって、EIATBS(Earnings Ignoring All The Bad Stuff、悪いもの全部を無視した利益)を好む経営者が多すぎる、と述べる。(『ファイナンシャル・マネジメント』)

リストラ費用などの一時的なコストを除いた調整後EBITDAで見れば増加している、などの決算発表を行う米国企業は多いが、果たしてどのような調整が行われているか、を調べることは個人投資家には難しい。聞こえの良い数字だけではなくて、調整される前の最終利益にも気を配る必要があるように思う。

 

米国株の情報収集に巡回しているサイト

決算期や年度始めで忙しい時期ですね。軽めの更新です。

普段、僕が株の情報を集めるために見ているサイトをご紹介します。ご参考になれば幸いです。英語のサイトも混じってます。

ブルームバーグ

早朝に更新してくれないので出勤途中に見ても前日の米国市場の情報が載ってないのが難ですが、マーケットの情報がちょうどいい感じに集約されてます。

Google Finance

米国市場のヘッドラインや個別株のニュースはGoogle Financeで見てます。ただ、Google Financeに載っている記事には、AIが書いた、今の株価と指標がいくらいくら、を羅列するだけの読む価値がない記事も多く、これだけでは不十分です。

Yahoo Finance

個別株のキャッシュフローやバランスシート、アナリストのコンセンサスが見やすいので便利です。

Morningstar

10年分のファンダメンタルデータがありDCF分析するなどの時に便利ですね。

ValueWalk

投資情報を売りつけるための提灯記事も多いですがダモダランなど気鋭の論者のレポートがたまに載っており読む価値があります。

SeekingAlpha

米国の個人投資家による株式分析が読めます。DCF法でのバリュエーション分析などをやっていて米国投資家の質の高さに感心します。あまり精緻でない分析もありそのまま信じるわけにはいかないですがコメントでも熱心に議論が交わされており勉強になります。

米国株-ブログ村

当ブログも参加しているブログ村です。いつもお世話になってます。素晴らしいブログがいくつかあります。一方で首肯できない記事もありますがそうした記事への反論から有意義な議論が生まれるのでいいんじゃないでしょうか。

決算が読めるようになるノート

IT企業の経営者の方のブログ。無料の記事しか読んでませんが面白いです。snapchatの記事は慧眼と思いました。

naked capitalism

ボリュームが多すぎて正直言って読んでる時間がないのですが、英語圏でも屈指の評判の個人ブログです。

皆様もオススメのサイトあればご教授ください。

追伸: Market Hackを挙げるの忘れてましたが、どうせみんな読んでますよね?

さらに追伸 (17/7/22):

アメリカ部和波の投資生活ブログ は日本語で読める米国株のブログとして非常に素晴らしいので、ご紹介させてください。

 

17年3月末のポートフォリオ

3月末のポートフォリオです。

3月の購入:GOOGL、投資信託3種類(毎月買ってます)

グーグル株はyoutubeの不適切動画問題で株価が急落した時に買いました。議決権がないGOOG(クラスC株)の方が安いのですがストックオプションによる希薄化懸念があるためGOOGL(クラスA株)を購入。

創業者のセルゲイ・ブリンとラリー・ペイジら経営陣が一株あたり10票の議決権を持つクラスB株を独占し、議決権の過半数を握っているため、現時点ではクラスA株の議決権に何の価値も感じていないのですが、今以上にブリンとペイジの独裁が強化されることはないと思うので、議決権の価値は今後上がっていくのでしょうかね。

ダモダランがヴァリアント株について白旗をあげる

著名な経済学者であり、コーポレート・ファイナンスの第一人者である、ニューヨーク大学のダモダラン教授がヴァリアント・ファーマシューティカルス(ティッカーシンボル:VRX)についてコメントしています。

http://www.valuewalk.com/2017/03/valeant-update-damaged-goods-deeply-discount-drug-company/?all=1

ダモダランは16年4月に適正株価を44ドルと分析してヴァリアント株を32ドルで購入しており、その後の株価下落で株を買い増して平均取得単価は21ドルと発言していました。これまで強気の分析をしていましたが、論調を一転させ、ネガティブなトーンになっています。

長いので僕が重要だと思った点を要約しますね。

・EBITDAが前年比30%減。利息費用増加しており有利子負債が1年間で4%しか減っていない。買収を繰り返す派手な会社から、堅実で低成長な企業に変身を遂げれば株価は持ち直すと思っていたが、ビジネスが思ったよりも毀損していて回復にはかなりの時間がかかる。

・法人税の減税、借入金利上昇見込みはヴァリアントにとってネガティブ。

・事業の継続が困難になるリスク10%を折り込めば適正株価は13ドル。現状の10ドルよりは高いがほとんど変わらない。

・株を売る予定は今の所ないが、取得単価21ドルに戻るとも思わない。

 

僕はもう少し安いところで買ったのですが(17ドルくらい)概ね同様の意見です。財務レバレッジが凄まじい企業なので、EBITDAの30%減は極めて厳しいです。借り入れの財務制限条項(コベナンツ)に引っかからなければ、いつか買値に戻るだろうという期待はありますが。

株式の時価総額がEBITDA1年分と同じたった30億ドルでも、有利子負債が290億ドルあるので、企業価値(エンタープライズ・バリュー)は30+290=320億ドルで、ゴーイングコンサーンを考えると割安ではないと思います。企業価値に対して株価がごくわずかなので、株価は極めてボラティリティの高い展開になり、許容できるリスクを超えてしまう投資家が多いはずです。

今後何年にもわたって無配当が続き、事業で得たキャッシュを有利子負債返済に充てる企業の株を持ち続けるのはつらいものがありますね。負債の桁が一つ違う東京電力よりはマシですが。オバマケアの撤廃断念がヘルスケア業界に与える影響はどうなんでしょうか?

配当貴族政策は最善の資本政策か?

前回の投稿からしばらく間が空いてしまいました。

担当する仕事に変更があり、年度末ということもあって慌ただしくしていました。前は会計寄りの仕事だったので、マーケットの動向について話す機会がなく気分転換にこのブログを書いていましたが、今は外為や債券、株式市場の分析に少しながら仕事で関わってますので、趣味でわざわざやらなくてもよくなった、ということもブログ更新の間を空けてしまった理由にあるのかもしれません。

とはいえ新しい仕事で得た知見や疑問点がたくさんありますので、このブログを利用して考えていけたらと思います。気長にお付き合いください。

以下、本題です。

 

何十年以上にもわたって増配を継続している配当貴族銘柄は、みんな大好きだと思いますが(僕も好きですが)、その「配当貴族」方針にはデメリットもあるのではないか、ということについて下記で述べたいと思います。

まず、前提として、配当貴族銘柄はほとんど例外なく素晴らしい企業です。配当貴族の一つの定義として、25年以上連続増配という基準がありますが、コカ・コーラ、マクドナルド、ターゲット、シェブロン、AT&T等、錚々たるメンバーが並んでいますね(ターゲットは最近アレですが)。これは生存者バイアスによるものです。配当は基本的には累積利益から捻出されるので、それだけの期間にわたって増配を続けられるというのは、安定した収益力、長期的なビジョン、強固なバランスシートがなければ不可能です。

なので、僕は配当貴族銘柄がまずい企業であるとか投資するなと言うつもりは全くありません。そうではなくて、今後も永劫にわたって増配を続けるであろう、と投資家から期待されるような企業の資本政策が最善なのかどうか、と言うことについて議論したいのです。

あまりこのような観点での議論をネットで見たことがありません。投資家から見て増配は嬉しい、だから配当貴族銘柄は素晴らしいと言う投資家目線の議論はたくさんありますが、企業の資本政策の観点から考える記事は少ないようです。しかし、株主資本主義において企業の目的は株主価値の最大化であるのであれば、株主も企業がどのようにして株主価値を最大化できる政策を取りうるか、と言う視点で考えるべきですね。

ちょっと数字にして考えてみましょう。ある企業のEPS(一株あたり利益)の実績と見込を仮定して、三つの配当方針を作ってみました。

一つ目は配当貴族方針で、毎年10%の増配を行う資本政策。二つ目は配当性向一定で、EPSの50%を配当する資本政策。三つ目は投資に必要な資金を年0.5として、余剰資金を配当する資本政策です。

割引率を5%として、配当の現在価値を計算すると、三つ目がもっとも現在価値が高くなっていますね。

投資家からの期待により増配を義務付けられている企業は将来に増配できなくなることを恐れ、必要以上の資金を溜め込もうとするインセンティブがあります。これは最善の資本政策ではありません。理想的な条件では、現時点で必要でない資金は全て投資家に配当という形で返すべきです。そうすることで、投資家はその企業よりも良い投資機会を有している別な企業に投資を行うことができるからです。

しかし、以下の理由により、企業は現実的には、不要な資金を全て投資家に返すことは難しいでしょう。

・企業の投資機会は常に変動するので、企業は現時点で必要とする資金を完全に見積もることができない。

・企業が余剰資金以外を全て配当する政策をとった場合、残りの資金がなぜ必要か、どのような投資機会があるのかを投資家に説明することが求められるが、そのような情報開示は他の企業の意思決定に有利に働く。

その反面、配当貴族方針は、投資家と将来の配当額の合意が取れているので、企業にとっては、過度な情報開示の必要がなく、余剰資金を好きなタイミングで投資することができます。投資家にとっては、企業の資本効率改善に圧力をかけ、将来の配当収益見込みが立てられるので、エージェントコストを下げ、株式のボラティリティを低下させるメリットがあります。

したがって配当貴族政策は、理論的には最善の資本政策ではないが、現実的には悪くない資本政策、と言えるでしょう。少なくとも、資本コストを上回って投資する機会がないにも関わらず、配当性向をごく低いところで固定しており、それが株主還元だ、と思い込んでいる多くの日本企業の資本政策よりはずっとマシだと思います。

 

もう一つの論点として、増配方針が資本と負債の構成に与える影響があります。

エネルギー企業などのシクリカルな銘柄に多いですが、利益により配当をまかなうことができなくなった場合にも、借り入れを行うことによって増配を達成しようとします。

この資本のリバランス政策にはプラスとマイナスの両面があると思います。

つまり、企業が強固なバランスシートを持っている場合、借り入れにより配当を行うことは、不要な資本の返還であり資本コストを下げる効果がありますが、自己資本比率が閾値を下回ると、倒産リスクを高め資本コストを増加させます。

現在の米国株の環境では、配当や自己株取得の株主還元が過熱しており、かなりの部分がフリーキャッシュフローではなく、資本のリバランスにより為されています。しかし金利の上昇局面では有利子負債の増加は危険を伴い、現在の株主還元のペースは維持不可能になるでしょう。

 

まとめ

・配当貴族政策は最善の資本政策ではないが、現実的には他の政策よりも悪くはない

・資本政策というよりも過去安定的に成長してきた配当貴族企業のビジネスが良い(wide moat)

・資本のリバランスによって増配を達成している企業はないか?配当利回り、増配率だけではなく、バランスシート、フリーキャッシュフロー、総還元性向を見てみよう